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大阪高等裁判所 平成6年(ラ)105号 決定

主文

一  原決定を取り消す。

二  本件を大阪地方裁判所に差し戻す。

理由

一  本件抗告の趣旨は「原決定を取り消す。相手方アルフィックスは、相手方佐々木英明の昭和六一年九月から昭和六三年五月の相手方アルフィックスにおける業務日誌を、抗告人以外の氏名抹消して提出せよ。」というものであり、その理由は、別紙(抗告状)記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

一件記録によれば、本件文書は、全国商品取引連合会の受託業務指導基準により、外務員に本件文書を作成させるべきことが商品取引員に義務付けられている文書であり、その必要的記載事項には、外務員が顧客を訪問した場合の「訪問結果の内容」や「電話等による委託者との重要な応対内容」が含まれていることが認められるので、この文書は、顧客と相手方アルフィックスとの間の商品取引委託契約関係の発生原因たる事実に直接関連する事項を記載した文書であり、しかも、外務員が備忘のため随時任意の事項を記載して作成する個人的なメモなどの内容文書とは異なるものといわなければならない。

そうすると、本件文書は、民事訴訟法三一二条三号後段の「挙証者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律関係ニ付作成セラレタル」文書に該当するものと認めるのが相当であるから、これが右文書に当たらないとして本件文書提出命令を却下した原決定は不当であり、本件申立ては理由があるというべきである。

よつて、原決定を取り消すこととするが、右申立ての許否を決定するについては、必要性等の点につきさらに審理をすることを要するので、本件を原審に差し戻すこととして主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 藤原弘道 裁判官 野村利夫 裁判官 楠本 新)

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